ペレットストーブと薪ストーブどちらのストーブを購入したらいいのか、客観的に分かりやすく比較してみました。比較対象のキーワードは、経済性、安全性、実用性、自然志向性の4つの単語です。

今回は安全性です。薪ストーブ或いはペレットストーブにはどのような危険が隠されているのでしょうか。その危険性を顕在化します。そして、その危険性を避けるために,どのような仕組みが組み込まれているのかも明らかにします。

安全性

ストーブは暖める道具です。少しだけ暖めるなら出力は少なくて済みます。しかし、部屋全体或いは居住する家の大半を暖めるとなると話は違います。ストーブも色が変わるほどガンガン燃料を燃す必要があります。しかし、このガンガン燃料を燃すと、暖かくなるのですが、同時にやけどや火災のリスクも高まります。さらには不完全燃焼による有害物質の発生など屋内で火を焚く危険は思った以上に高いのです。もちろん、薪ストーブやペレットストーブのメーカーはそのリスクを承知しており、リスクを避けるためにあらゆる安全に使用する方法や仕組みを導入はしています。しかし、設置工事の不具合や間違った使い方をすれば、危険は高まります。

薪ストーブの危険性その①煙道火災

薪ストーブは、薪を燃料としています。薪にはいろいろな種類がありますが、乾燥状態が悪い(含水率=水分含有量が20%未満であれば、効率的な燃焼が得られる)薪の場合、木材から水分を蒸発させるために使用されるエネルギーが多く、効率が悪くなると同時に、不完全燃焼気味になります。これは低温状態で薪を燃す事を意味し、クレオソート発生の主な要因となります。このクレオソートが煙突に付着し蓄積すると、いづれ引火し煙道火災に繋がります。煙道火災は薪ストーブが原因となる火事で大半を占めると云われます。

室内立ち上げの煙突

煙突内部には少々のクレオソートが溜まりつつあります

煙突ブラシ200mmで強く押したり引いたりします

掃除の後はご覧のように綺麗になりました

 

この煙道火災を防止するためには定期的な煙突掃除が必要となります。煙突内部に付着したクレオソートを煙突ブラシで削り落とすのです。数年に一度という画一的な方法ではなく、クレオソート独自の匂いが室内に漂ったら早めに掃除をすることが良いでしょう。

薪ストーブの危険性その②低温着火

薪ストーブの暖房は、輻射熱を利用して暖まります。輻射熱は心地よい暖かさをもたらすのですが、周辺の壁などの建造物も同時に暖めます。長期間、暖められた壁や可燃物は、徐々に乾燥し炭化していくのです。そして、ある時点で着火し火災を引き起こすのです。これが低温火災です。薪ストーブの周辺は高温になるので、この輻射熱を防ぐため耐火レンガ等の不燃材で囲って引火を防止します。しかし、この耐火レンガや不燃材を使用しても、裏の壁には熱が伝わりゆっくりと炭化が進んで、ある日突然発火するとう現象です。

この低温火災を予防するためには、ストーブと壁の距離を充分確保する。或いは、壁とストーブの間に耐火に加え断熱性のある建築材を設けるなどの策が必要でしょう。また、耐火レンガを設ける場合は、壁と耐火レンガの間に空気が流れるに空間を作ることも得策でしょう。

ストーブの背面と側面は人がゆったり歩けるほどのスペースを設けています。

薪ストーブの危険性その③やけど

ストーブが高温になれば、やけどの懸念が高まります。単純に高温のストーブに触れてやけどする以外にも、薪をストーブに放り入れる時や、炉内をひっかき棒で掃除する時など、慣れると耐熱用の手袋を使用しないで素手で作業したりする事もあるので注意が必要です。素手の場合は、薪の棘が結構刺さるので、やはり作業する場合は手袋は欠かせないでしょう。

また、薪ストーブはケトルといわれるやかんをストーブ上部に置いて加湿させます。このやかんのお湯が地震の揺れ等でこぼれ、高温の薪ストーブに散らされると急激な水蒸気が発生し弾いて飛び散ります。この飛び散った湯玉がやけどをもたらす事が考えられます。

薪ストーブの危険性その④逆流

ストーブの煙は、煙突を通って、煙突トップから抜けだし大気へ流出します。これは、上昇気流が発生して煙を上に向かわせる為です(これを業界ではドラフトと呼びます)。上昇気流を発生させる為には熱が必要です。これを利用したのが熱気球である事はご存知でしょう。薪ストーブも同様です。煙を上昇させるため熱を作り、煙が上昇すれば、これが牽引となってストーブ炉内に漂う煙もまた、上に吸い上げられる。これの連続したプロセスが薪ストーブを燃焼させる事なのです。

ここ数年、高気密高断熱の新築住宅が増えています。これは、気密性を高める事で外気温が屋内に影響するのを防ぐと同時に外気汚染物質の侵入を妨げるという目的のようです。さて、この高気密高断熱に薪ストーブを設置した場合、どのような影響があるのでしょう。

高気密高断熱住宅は空気の入と出を機械によってコントロールしますが、第3種換気(※1)の場合室内は負圧になります。負圧の空間には、周辺から空気が流入するという現象が生じます。ストーブ炉内の煙も上昇気流が弱ければ、負圧の室内空間に流れ込ます。これが逆流です。この逆流を防ぐには、室内を正圧に保つ事が必要です。換気扇等の排気ファンを一旦止めて、薪ストーブの温度が高まり安定した上昇気流が得られるようになったら換気扇のスイッチをONにすると改善されます。

また、突風などの大気の変動で、上昇気流がうまく生じないときも逆流の恐れがあります。この場合の改善策は強風対策用の煙突トップを使用するなどの方法を用いることが良いでしょう。

薪ストーブの危険性その⑤未燃焼ガス

また、逆流は薪が燃える際に発生する未燃焼ガスが室内に流入するという事です。煙は、木や油脂のような有機物を、酸素過剰または逆に酸素不足の状態で不完全燃焼させたときに灰色や黒色の煙が出ることが多いですが、これが有害物質なのです。煙に含まれる成分の大半は炭素、すなわちススです。ただのススならば生体へ及ぼす影響は軽微(炭素は自然界に豊富に存在する)です。しかし、未燃焼ガスに含まれる窒素や硫黄、銅や亜鉛と云った金属も含まれた煙の場合、これは非常に毒性の強い煙になることがあります。この未燃焼ガスにはVOC、PAH、PM、CO等(※注2)の有害な成分が多く含まれ、それぞれ身体に影響を及ぼします。このような未燃焼ガスの流入を防ぐためには、薪ストーブの危険性その④で指摘したような方法を講じる事。さらに、含水率20%以下の乾燥した薪を使用する事。などで予防出来るでしょう。

(※1)第3種換気=住宅の換気システムは大きく分類すると三つの方法があります。第1種換気、第2種換気、第3種換気です。。第1種換気は空気の「入」と「出」をファンでコントロールします。第2種換気は空気の「入」をファンを使い、「出」は排気口を設けるものです。また、第3種換気は空気の「入」は給気口とし、「出」に排気ファンを設けるものです。この第3種換気は「出」が機械による強制排気のため、どうしても「出」が強くなってバランスが崩れ、室内は負圧になりやすくなります。

(※注2)VOC(Volatile organic compound)は揮発性有機化合物の総称。光化学オキシダントおよび浮遊粒子状物質 (SPM) の二次生成粒子の原因物質とされているほか、発がん性など人体に有害な影響を及ぼすものもある。PAH(Polycyclic aromatic hydrocarbons)多環芳香族炭化水素の総称。皮膚や呼吸器系、膀胱、肝臓、腎臓に刺激を与える物質が多く、発がん性、変異原性、催奇形性を持つものもある。PM (Particulate matter)粒子状物質。呼吸器疾患、循環器疾患および肺がんの疾患に関して、総体的に一定の影響を与えるとされる。CO一酸化炭素。血液の酸素運搬能力を下げ、一酸化炭素中毒を引き起こす。参考:環境省 木質バイオマスストーブ環境ガイドラインより抜粋


ペレットストーブの危険性

ペレットストーブは薪ストーブのようなアナログな暖房機器ではありません。全てがセンサーやモーター、デジタルの操作盤等の機械類でコントロールされています。このため、不都合があれば、センサーが働いてペレット燃料の供給を止めてしまいます。こういった観点から見れば、薪ストーブのような危険性は少ないでしょう。しかし、屋内で火を焚くのは薪ストーブ同様の危険性もあります。それでは、ペレットストーブにはどのような危険が内在しているか、それを考えてみましょう。

ペレットストーブの危険性その①メーカーの設計ミス

輸入ペレットストーブが少しづつ市場に出回り、それを受けて国産ペレットストーブを製造しようとするメーカーが現れたのが、今から14・5年程前でした。外国製ペレットストーブを分解し、それを基に国産ペレットストーブを開発製造しました。当初、導入したのが自治体です。自治体は当時、森林資源の有効活用にペレット燃料に活路を見出そうとしたのです。メーカーが製造したペレットストーブは自治体の公共施設に設置し、いざ、着火という段回で、燃料を供給するスクリューのバーが折れ曲がってしまい、使いものにならなくなったという今なら考えられないようなトラブルも発生しました。

また、別の国産ペレットストーブは、スイッチをOFFにしてから数時間後の真夜中に、ホッパー(燃料タンク)から煙が立ち上り室内を煙で充満させてしまいました。原因は前述、「薪ストーブの危険性その④逆流」でも指摘したように、換気扇を使用していたことで、室内が負圧になり、粒子状の熾火がホッパー(燃料タンク)のペレットに付着し、そこから燻り始めたのです。このような、トラブルはやはりメーカーの未熟性と云わざるを得ません。ペレットストーブの危険性の一番はこのようにメーカーの設計ミスが原因です。

こういったトラブルは、いづれもメーカー側の経験不足です。最近はこのようなトラブルは報告されていないのですが、一部のメーカーには不安なシステムの上、構築されているストーブもあると伝えれています。

ペレットストーブの危険性その②設置施工ミス

ペレットストーブは、薪ストーブのように長い煙突を立ち上げて、上昇気流を作り出して燃焼させる仕組みではありません。排気ファンによる強制排気で燃焼させます。従って、煙突も薪ストーブほどの長さは必要ありません。せいぜい1.5m〜2m位の高さであれば、問題は無いのですが、工事費を安価にするため煙突をストーブの吐出し口から壁を貫通し、横に配管するだけで終えてしまうような設置例があります。

水平横出しの煙突

立ち上げ配管に変更

 

 

 

 

 

 

 

煙突配管を水平のままにすると、ストーブによっては燃焼中火の粉が飛ぶのが見えます。夜暗闇のなかで火の粉が飛ぶのは不安です。また、強風などの影響から逆流の恐れもあります。さらに後で詳しく説明しますが、突然停電になって排気出来なくなった場合、水平横出しの配管では、もろに煙が室内に流れ込みます。

薪ストーブ同様曲がりが多いストーブは、燃焼効率の悪化に加えススや灰が溜まりやすくなるので、曲がりは少なくし効率良く排気出来るような配管にしなくてはなりません。

曲がりの多い配管

45°エルボで曲がりを抑える

 

 

 

 

 

 

ー ユーザーの使用方法のミス ー

ペレットストーブの危険性その③間違った使用方法

一番良くある間違いが、ペレット燃料はどれも同じと思い、市販のペレットを、自分のストーブの燃料に使うという間違いです。ペレットは、車で云えば燃料のガソリンに当たります。燃料でも軽油もあれば重油も在ります。またガソリンでもレギュラーガソリンやハイオクガソリンも在るのです。ペレットもホワイトペレットや比較的安価な全木ペレット、それにバークペレット(※注4)があります。

購入したペレットストーブの取り扱い説明書には、”ホワイトペレットを使って下さい”或いは”全木ペレットも使用可能”とか”バークは使用不可”とかの記載がある筈です。ホワイトペレット以外使用不可のペレットストーブに全木ペレットやバークペレットを使う事は、車で云えばハイオクオンリーの車に軽油を使う事と似ています。直ちにトラブルが生じる事は無いですが、長年使用すれば車への負担は大きいでしょう。同様に間違った燃料の使用はペレットストーブに大きな負担を与えて、故障の原因となります。

ペレットストーブの危険性その④メンテナンスをしない

ペレットストーブの使用に関して次に多い間違いは、「メンテナンスをしなくても大丈夫」という間違いです。ペレットストーブは、室内で火を焚く薪ストーブと同じ暖房器具です。従って、メンテナンスは絶対必要です。それも薪ストーブ以上のメンテナンスが必要とされます。薪ストーブの場合は、煙突が極めて重要なメンテナンスの対象ですが、ペレットストーブは煙突はもちろん、燃料供給モーター、排気ファン、温風ファン、各種センサーなどの機器類のメンテナンスも必要です。それゆえ薪ストーブ以上のメンテナンスが必要なのです。センサーや各機械類が破損してしまえばストーブは運転を停止します。真冬の気温が低い環境の中でペレットストーブが使えないのは最悪です。こうならない為にもメンテナンスはしっかり行いましょう。

メンテナンスを怠った場合、左写真のように煙突の中に灰が充満します。あと少しでペレットストーブは使用出来なくなります。(もちろん、灰を取り除いてメンテナンスをすれば回復します)

 

 

 

ペレットストーブの懸念性

突然停電になった場合:ペレットストーブは電気を利用して排気ファンや燃料供給スクリューを動かして、ペレットを燃やすストーブです。これが、突然の停電になったら使用出来なくなります。突然の停電事態は数年に一度あるかないかの確率でしょうが、ストーブが使えなくなるのは、真冬には応えます。普通、こういった場合も考えて灯油ストーブなど代替暖房機器を用意しておくべきです。代替の暖房機器があれば問題はありません。

問題は、電気が止まった事で強制排気が出来なくなります。すると、水平横出しや煙突が低い取付工事を行ったストーブは、上昇気流が発生しないために、室内に逆流する恐れがあります。そのままにしておけば、ペレットも供給が止まっているので、いづれ火は消えてしまいますが、煙が室内にたちこもると火災報知機が作動したりするなどの問題が生じる可能性があるのです。

燻っているペレットに水を掛けて消火するなどの事は絶対禁止です。故障ではありません。ストーブに水を掛けたら使えなくなってしまいます。まして火事ではありません。放っておけば消えるのです。しかし、炉内のペレットの量が大量であれば燻ぶる時間は長時間になります。その時は取り除いて下さい。多少、室内は煙が充満する事も考えられますが、取り除いて屋外に出して下さい。

停電でないにも関わらず、電源が切れて強制排気ファンが止まった場合も同じです。但し、この場合は再度スイッチを入れ直せば解決する事が多いので、お試し下さい。

(※注3)北米性のペレットストーブは排気ファンの出力が高く、トレーラーでの使用も考慮してストーブの吐出し口から水平に壁を貫通して立ち上げないで、そのまま排気するストーブもあります。

(※注4)ホワイトペレット:樹木の幹の部分を燃料にしたペレットです。北米ですと建築材の端材等を燃料にします。乾燥状態も良く出力も高くなります。輸入ペレットストーブには必要な燃料です。全木ペレット:樹木の幹の部分と樹皮の部分をミックスした燃料です。国産ペレットストーブの中には全木ペレットでも可能とされる機種も出ています。バークペレット:樹皮の皮の部分を燃料にしたペレットです。つい、最近まで樹皮は廃材として処理され、主に堆肥等に利用されていましたが、ペレットストーブの技術革新により、バークペレットでも燃えるストーブが現れました。


まとめ

安全性に関しては、薪ストーブとペレットストーブを比べると、どちらもメンテナンスがとても需要だという結論に達します。薪ストーブは燃料になる薪の種類や乾燥状態、さらに使用回数などで、今直ぐにメンテナンスが必要か否かが決定します。ペレットストーブも同様ですが、メンテナンスをしないと、これ以上は無理と云ってストーブをストップさせてしまうのです。ペレットストーブはセンサーでユーザーに知らせるのですが、薪ストーブの異常を察知するためには、ある程度の経験が必要でしょう。